咽頭結膜熱(プール熱)
咽頭結膜熱(プール熱)
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発熱して、体がだるい、風邪だとおもったら、、、目が真っ赤に!!
- 6月に入り、日に日に暑くなってきました。季節性の感染症として、冬に流行するインフルエンザが良く知られていますが、夏になると、こんな症状が流行することがあります。咽頭結膜熱、別名プール熱といわれる感染症で、発熱、のどの痛みに加えて、目が真っ赤に充血し、結膜炎という症状が出ることが特徴です。
今回は、この病気について、お話したいと思います。
咽頭結膜熱(プール熱)とは?
咽頭結膜熱は、アデノウイルスを原因とする感染症です。アデノウイルスは多くの種類があり、このうち咽頭結膜炎の原因となるのは、主に3型や7型のアデノウイルスです。
子供を中心に流行する感染症で、昔は、プールでの接触や、タオルの貸し借りによって集団感染することが多かったため、プール熱とも呼ばれていましたが、様々な感染予防対策がなされたことにより、最近はプールでの集団感染の報告は見られなくなっています。
主に夏に流行する感染症と考えれていましたが、近年、冬にも小規模な流行が見られます。とくに昨年の秋~冬にかけて大規模な流行が見られ、国内では過去10年間で患者数が最多となったほか、東京都では感染症法が施行された1999年以来、初めて警報基準に達するほどの患者数が報告されました。
現在、感染状況は徐々に落ち着き、例年通りとなっているようですが、これから夏にむけて、感染の増加に注意が必要です。
咽頭結膜熱の症状は?
主な症状は以下の3症状です
1、咽頭炎 : のどの痛み、腫れ 2、39度前後の発熱 : 高熱と微熱を繰り返し、4~5日程度続くことが多い 3、結膜炎 : 結膜が真っ赤に充血し、涙や目やにがでる |
そのほかにも、リンパ節の腫れ、腹痛、下痢などを起こすこともあります。
- 通常の風邪と異なり、目に症状が出ることが、この感染症の特徴です。両目、または片目の結膜が充血して、真っ赤になり、目やにが出ます。子供の場合、偽膜といって、白い膜のようなものが、結膜にできることもあります。目やにと違って、拭っても簡単に取れません。
- 余談ですが、似たような症状が出る感染症として、流行性角結膜炎(はやり目)があります。これも同じアデノウイルスが原因の感染症となりますが、流行性角結膜炎の場合、目の症状のみで、発熱やのどの症状はありません。
咽頭結膜熱の治療とは?
- アデノウイルスに対する特効薬はないため、特別な治療は必要ありません。症状に応じて、対処療法が行われます。発熱があるため、最初は小児科や内科で診断されることが多く、目の症状が軽度の場合は経過観察となりますが、症状が強い場合は眼科受診を勧められます。眼科では炎症を抑えるためのステロイド点眼薬と、二次感染を防ぐための抗菌薬の点眼を行います。
一般的には、特別な治療を行わなくても1週間程度で症状が治まりますが、結膜炎の症状が落ち着いたあとに、角膜が白く濁り、視界が少しぼやけることがあります。残ったウイルス抗原に対するアレルギー反応だと考えられていますが、その場合は完全に治癒するまで、長期にステロイド点眼を行います。
咽頭結膜熱はどのように感染するの?
- アデノウイルスは大変感染力の強いウイルスです。咳やくしゃみなどの飛沫感染、手についたウイルスが口に入る接触感染によって、広まっていきます。また、他人の使った目薬を共用することで、感染することもあるため、注意が必要です。
昔は、プールでの接触や、タオルを共用することで集団感染が起こっていたため、プール熱と呼ばれていましたが、近年ではそのような集団感染は起こらなくなっていきています。
- 感染予防は、一般的なウイルスの感染予防と同様で、うがい、手洗い、マスクが有効です。コロナ禍で咽頭結膜熱の患者数が激減したため、新型コロナウイルスの対策は、咽頭結膜熱に対しても有効であると考えられています。
咽頭結膜熱の症状は、通常1~2週間で治まりますが、その後、約1か月は患者さんの排泄物にウイルスが含まれますので、トイレの後や、おむつ交換の後は、入念な手洗いを心がけましょう。
感染したら気を付けること
家族や周りの人にうつさないために、以下のことを心がけましょう
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1、タオルやお風呂は別にしましょう
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2、流水と石鹸で手をよく洗いましょう。
- →アデノウイルスに対しては、一般的なアルコール消毒はほとんど効果が得られません。
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3、咳エチケットを心がけましょう
- →咳やくしゃみなどの症状がある際は、マスクの使用が効果的です。
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4、涙や目やになどを拭いたティッシュはビニール袋に入れて、まとめて捨てましょう
- →涙や目やににウイルスが含まれているため、接触感染するリスクがあります
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5、医師の許可が出るまでは、学校・保育園・幼稚園は休みましょう
- →咽頭結膜熱は、学校保健安全法上の学校感染症なので、症状がある期間および、
- 症状が消失してから2日間は出席停止です。大人の方の外出に関しては、個々の
- 判断となりますが、感染力の強いウイルスであることを踏まえ、可能な限り、
- 人との接触は最小限にするように心がけましょう。
今回は、夏に流行ることの多い、咽頭結膜熱(プール熱)についてお話させて頂きました。コロナ禍では、感染対策の効果で、コロナウイルスだけでなく、他の感染症の患者も激減しましたが、コロナ禍もあけ、以前のように、細菌やウイルスによる感染症がふえてきているようです。また、数年間、流行がなかった影響か、これまでとは違った季節に流行したり、爆発的な流行が見られるような感染症もあるようです。
手洗い、うがいをしっかり行い、もしかかってしまったら、早めの対処を行うよう心がけましょう。
- 参考文献・出典
- 1)日本小児眼科学会編集. 子どもを診る医師・メディカルスタッフのためのやさしい小児の眼科 知っておきたい診かた・考えかた・眼の疾患. 診断と治療社.2023.p328
- 2)国立感染症研究所ホームページ https://www.niid.go.jp/niid/ja/10/2096-weeklygraph/1645-02pcf.html