白内障手術症例①
白内障手術症例
白内障手術において、選択することができる眼内レンズには様々なものがあり、それぞれのレンズの特徴も異なっています。手術を受ける上での参考としていただけるよう、今後、当院での手術症例をご紹介していきたいと思います。今回のコラムでは、選定療養の対象となる多焦点眼内レンズであるClareon PanOptixを使用した2症例についてご紹介します。
症例① 3焦点眼内レンズ(Clareon PanOptix) 60代男性
主訴
2年前から右眼が見づらく、かかりつけの眼科でそろそろ手術したほうが良いと言われた
術前の状態
- 両目とも強度近視
- 右眼には核白内障による視力低下および近視の進行を認め、左眼には年齢相応の白内障を認めた
治療概要
もともと強度近視で裸眼の視力は良くありませんでしたが、コンタクトレンズを使用しているため、遠くが見えている状態に慣れていました。術後は、近くも眼鏡なしで見えるようにしたいとご希望があり、夜間の運転はほとんどされないこと、また、手術前の検査で多焦点眼内レンズの使用が望ましくない緑内障などの眼疾患や角膜の高次収差が認められなかったことから、3焦点の眼内レンズであるPanOptixを勧めさせていただきました。お仕事がお忙しいことから、両眼同日の手術を行いました。
術前視力 術後視力
遠見視力(5m) ※( )は矯正視力 遠見視力(5m) 中間視力(1m) 近見視力(30cm)
Vd(右眼) 0.03(0.8) Vd(右眼) 1.0 1.0 1.0
Vs(左眼) 0.1(1.2) Vs(左眼) 1.0 1.2 1.2
術後の感想
眼鏡なしで遠くも近くも違和感無く見えて快適。夜間の異常光視症(ハロー・グレア)はあるが、手術前に話を聞いていたし許容範囲内です。友人にも勧めさせて頂きました。
症例② 3焦点眼内レンズ(Clareon PanOptix) 70代女性
主訴
1年前から右眼が見づらく、二重に見えるようになった。半年前に他の眼科で白内障と言われ点眼を開始したが、最近特にぼやけて見え る。
術前の状態
- 両目とも近視
- 右眼には皮質白内障と後嚢下混濁による視力低下を認め、左眼には年齢相応の白内障を認めた
治療概要
もともと近視で裸眼の視力は良くなく、日常生活は眼鏡で過ごされておりました。お仕事でPCを使用されておりできれば選定療養の多焦点眼内レンズを希望されました。運転はされないとの事でしたが、写真を撮ることをご趣味にされていたため、多焦点眼内レンズを使用することで、単焦点眼内レンズに比べて術後のコントラスト感度の低下が懸念されました。この点について患者様によく説明をさせて頂き、①白内障の程度が強いため、今よりはコントラスト感度は低下しない。②乱視があるため、コントラスト感度が低下しないClareon Vivityの使用は難しい。③写真を趣味にしているご友人が多焦点眼内レンズを入れられており快適に過ごしている。以上の理由から3焦点の眼内レンズであるPanOptixを勧めさせていただきました。また、症例①と同様に、手術前の検査で多焦点眼内レンズの使用が望ましくない緑内障などの眼疾患や角膜の高次収差は認められませんでした。
術前視力 術後視力
遠見視力(5m) ※( )は矯正視力 遠見視力(5m) 中間視力(1m) 近見視力(30cm)
Vd(右眼) 0.07(0.15) Vd(右眼) 1.2 1.0 1.0
Vs(左眼) 0.2(1.0) Vs(左眼) 1.2 1.0 1.0
術後の感想
どこを見るときにも眼鏡なしで見えてうれしいです。写真も問題なく続けられています。夜間の異常光視症(ハロー・グレア)に関しては、光がふわふわと滲むが、こんなものかと困っていません。
3焦点眼内レンズであるPanOptixは当院で最も使用している多焦点眼内レンズになりますが、私の実感としては術後に眼鏡を必要とする方はほぼいらっしゃいません。夜間の異常光視症(ハロー・グレア)は出るものの、許容できる程度であり、術後の屈折誤差も生じにくいため、非常にお勧めしやすい眼内レンズです。また、PanOptixの焦点距離は中間が60cm、近方が40cmとなっていますが、今回ご紹介した患者様のように1mや30cmの視力も高い確率で良好であり、異常光視症を除けば遠方から近方まで満遍なく見える優れた眼内レンズだといえるでしょう。
夜間の運転を重視される方で、なおかつ近方視力を重視される方は、焦点が5か所あり遠方から近方まで満遍なく見える上に、複数の焦点を持つ多焦点眼内レンズの中で最小限の異常光視症に抑えられるIntensityをお勧めします。保険を使用できない自費の眼内レンズとなりますが、その性能や異常光視症の少なさから、現在選択することの出来る多焦点眼内レンズの中で最高峰の眼内レンズと言えるでしょう。
もし、老眼鏡の使用が許容できる方であれば、乱視が少ない方は選定療養の眼内レンズであるClareon Vivityを、乱視のある方は自費の眼内レンズであるMiniwell ReadyやEvolveがお勧めとなります。これらの眼内レンズは多焦点眼内レンズの中でもコントラスト感度が高く、夜間の異常光視症もほとんどない焦点深度拡張型の眼内レンズであり、近方視力がやや弱いことを除けば自然に近い見え方を実現可能な大変優れた眼内レンズです。特にEvolveは患者様の近視や乱視に合わせてオーダーメイドが可能となっているため、他の眼内レンズでは適応とならないような最強度近視の方や乱視が強いために多焦点眼内レンズをあきらめていた方でも選択できる可能性があります。
当院では多焦点眼内レンズの力を最大限に引き出すために、手術前の検査において、最新の光眼軸測定器であるARGOSを使用しており、これにより高い精度で患者様の眼軸を測定することができ、屈折誤差が最小限となる眼内レンズ度数の選択が可能となっております。また、ARGOSは他社の検査機器では測定できないような進行した白内障でもほぼ100%測定が可能となっており、多くの患者様の術後視力の向上に繋がっています。また、角膜形状解析装置であるCASIA 2を使用することにより、通常の白内障手術前に測定される角膜前面乱視だけではなく、角膜後面乱視や不正乱視などによる高次収差の測定が可能となり、多焦点眼内レンズの適応の有無や術後の乱視の軽減を高い精度で行うことができております。当院ではさらに、ORAシステムという手術中にリアルタイムで眼の状態を測定し、世界中のビッグデータと比較することで最適な眼内レンズ度数や乱視軸を選ぶことができる器械を導入・使用しており、患者様の術後の屈折誤差を可能な限り少なく、精度の高い手術を受けて頂けるよう心がけています。
特に世界中で数多く使用されている多焦点眼内レンズであるPanOptixは、それだけ多くのデータが蓄積されており、手術中にORAシステムを使用することで屈折誤差が最小限に抑えられ、患者様の術後視力の向上に繋がっていると考えています。
当院では手術するかどうか迷われている方、検診などで白内障を指摘され、今すぐ手術が必要ではないものの将来的な選択肢を知りたい方など、すべての患者様に正しい情報を知ってもらい、将来を見据えた治療を選択していただきたいと考え、白内障の無料相談会も開催しております。どうぞお気軽にお問い合わせください。