院長コラム

学校健診(学校の定期健康診断)とは

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 4月に入り、新年度が始まりました。毎年この時期になると、学校では学校健診が行われます。眼科は健診で視力などで要検査となるお子さんが多く、この時期は多くのお子さんが眼科を受診されます。そこで今回は学校健診についてお話したいと思います。

 

 

学校健診とは

 学校健診は学校保健安全法で定められており、毎年4月~6月に年1回の健診が実施されています。対象は幼稚園から大学までで、そのステージごとに応じて必要な検査項目が実施されています。

 

学校で行われている眼科の検査項目

 

視力検査

 

 視力検査は学校検査の前段階の検査として、眼科医や視能訓練士ではなく、養護教諭などの学校関係者によってスクリーニング的な意味合いで実施されています。視力検査の測定法は教室での見え方を基準にした370(サンナナマル)方式が広く採用されています。

370方式視力測定法とは、0.3、0.7、1.0の大きさの3種類のランドルト環(Cのような輪っかに一か所切れ目がある指標)を使用して行われます。そのため、視力検査の結果はA(1.0以上)、B(0.7~0.9)、C(0.3~0.6)、D(0.3未満)の4種類となっており、図1のように、学校生活で必要とされる視力の目安が学校関係者や保護者にも理解されやすいように説明がなされて  います。                                     (日本眼科医会より引用)

 

外眼部健診

 まぶた、まつ毛、結膜や角膜の視診を学校医が実施します。

 まずは結膜炎など、ウイルスや細菌の感染による眼の病気の有無をチェックしますが、これは夏季に実施されるプール学習前のチェックとしてもとても大切な検査になります。他には眼瞼下垂や逆さまつ毛のチェックを行いますが、最近ではアレルギー性の眼疾患を持つお子さんが増えており、その診断や治療、対策も重要になります。

 

眼位検査

 こちらも学校医が視診やペンライトを用いて検査を行い、斜視や斜位の有無をチェックします。

 

 

 

学校健診で目の異常を指摘されたら

 目の異常を指摘された場合、日常生活や学習に影響がでることがあるため、速やかに眼科の診察を受けることが勧められます。

 とくに、視力異常については、低年齢の子供の場合、自分では異常に気づかない場合が多く、学校健診を受けて、初めて子供の視力の悪さに気付いたという保護者も多くいらっしゃいます。

 視力検査に関しては、先にもお話した通り、幼稚園や学校で行われる検査は、簡易的な検査のため、実際に眼科で視力を測ってみると健診結果と違う場合も多くあります。そのため、眼科での正確な診断を行うことはとても重要です。とくに小さなお子さんの場合、もし、何らかの視力異常があっとしても、適正な眼鏡を使用するなど、早期に適切な治療を開始することで、その後の発育を促したり、視力異常の進行を遅らせたりできる場合があります。

 

子供の近視を防ぐために

 

 現在、世界的に近視の増加が社会問題となっております。2016年の時点で、2010年には28%であった近視の有病率が2050年には実に人口の52%に、およそ10%が強度近視(とくに近視が進んだ状態)になる1)と言われていましたが、現在、予測を上回るスピードで近視が増加しています。日本でも、義務教育の子供たちに1人1台のデジタルデバイスが配布されたことや、コロナ禍を経た生活習慣の変化などにより、低年齢からタブレットなどのデジタル機器に子供たちが触れる機会が多くなりました。そのため、今後子供たちの近視の進行や視覚への影響が懸念されています。

 実際に診療をしていても、ここ数年とくに近視の進んだ、強度近視の状態で受診されるお子さんを見かける機会が多くなりました。強度近視になると、視覚障害の原因となる近視性の黄斑症や網膜剥離、白内障、緑内障のリスクが飛躍的に上昇するため1)近視の治療と予防が社会的に重要な課題です

 近視の進行には、生活習慣も大きく関わっています。学校健診を機会に、お子さんのデジタル機器の使い方や、外遊びの習慣、室内の照明環境、学習環境などをぜひ見直してみてください。

 

 

 当院では近視抑制治療をはじめ、結膜炎やアレルギー性結膜炎、眼瞼炎、内反症、ものもらい(麦粒腫・霰粒腫)、斜視や眼瞼下垂など、様々な眼疾患の診察をおこなっております。学校の健康診断で視力異常や眼の問題が指摘されたら、お気軽にご相談ください。

 

 

 

 

参考文献

1) Haarman AEG, Enthoven CA, Tideman JWL, Tedja MS, Verhoeven VJM, Klaver CCW. The Complications of Myopia: A Review and Meta-Analysis. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2020; 61(4): 49.