オルソケラトロジーとは
角膜の表面にコンタクトレンズを装着し、角膜をフラットにしていくことで、網膜上にピントが合うようにする近視治療法です。レンズは眠っている間に装着します。角膜のカーブをゆるやかにすることで近視度数を弱め、昼間に眼鏡をかけなくても、遠くを見えるよう目指していきます。日本では2009年(平成21年)以降、厚生労働省により認可されました。治療を始めたばかりの頃ですと、矯正効果はそこまで持続されず、しばらく経過すれば元の視力へ戻ります。しかし1~2か月の間、毎日寝る前に着け続けていくうちに、少しでも効果が持続できるようになります(もちろん個人によって効果の現れ方は異なります)。その結果多くの方が、日中に眼鏡なしで過ごせるようになりました。
また近年では、オルソケラトロジーには近視進行抑制効果があると判明されました。そのため近視が進んでいるお子さんの治療にも、活用されつつあります。オルソケラトロジーは手術と違い、装用を中断すれば角膜を元に戻すことができます。そのため、治療中に何か不具合が生じた時でも、別の矯正方法(眼鏡やコンタクトレンズなどの装用)へ途中変更することも可能です。
※装用時間は「5時間以上」にしてください。治療期間中には、数時間のまとまった就寝時間を確保する必要があります。
※視力が安定した後でも、ハロー・グレア(視界のにじみ、光がギラギラして見えるなどの症状)などが現れる可能性があります。車あるいはバイクの運転などをされる際は、十分に気を付けて運転しましょう。
オルソケラトロジーを
装用するメリット
- 日中、眼鏡やコンタクトレンズを着ける必要がなくなる
- 6歳ころから使用可能、年齢制限は特になし
- 手術を受けなくてOK
- コンタクトの乾燥からくる、目の違和感がない
- 起きたらすぐに物が見える
- コンタクト装用時の乾燥や目の違和感がない
- 手術が要らない
当院では、治療に適応できるか否かを検査で確認してから、慎重に判断していきます。オルソケラトロジーが気になる方はぜひ、お気軽にご相談ください。
またオルソケラトロジーは、レーシックなどのような、角膜を削る屈折矯正手術ではありません。装用自体をやめれば、すぐに元の状態へ戻すことも可能です。そのため将来、別の矯正方法を提案された場合でも、「オルソケラトロジーを行ったから治療を受けられない」と諦めなくても済むようになります。
※検査の結果によっては、治療が難しい可能性もあります。予めご了承ください。
下記のような方にお勧めします
眼鏡やコンタクトレンズを着けるのが面倒な方
「業務内容の都合によって眼鏡をかけることが難しい方」や「コンタクトレンズを着けているが夕方になると目が充血する、ホコリが入るとかなり痛む方」などに当てはまる方に適しています。
裸眼でスポーツしたい方
球技やスイミング、格闘技、サーフィン、スキューバダイビングなどを趣味にしている方の中には、「眼鏡やコンタクトレンズが邪魔だな……」と悩む方もいらっしゃるのではないでしょうか。オルソケラトロジーは、そういった方にお勧めしたい矯正方法です。
外科的手術であるレーシックやICLなどに抵抗感がある方
レーシックやICLなどは、近視の治療法として一定の評価を得ている方法です。しかし中には、「どうしても目の手術が怖い」と抵抗感を抱く方もいらっしゃるのではないでしょうか。オルソケラトロジーは外科的手術ではありませんので、就寝前の装用を中断すれば、元の状態へ戻すことができます。
近視進行の抑制効果
特に、角膜が柔らかい若年層ですと、オルソケラトロジーの装着を継続することで、近視進行の抑制効果に期待できると言われています。
オルソケラトロジーレンズの近視抑制効果
オルソケラトロジーは、日中の裸眼視力の改善に加えて、軸外収差理論によって眼軸長の伸展を抑える効果があることも判明されています。オルソケラトロジーの場合、周囲の光の結像は網膜よりも前に行われるため、眼軸長を伸ばす刺激が減ります。そのおかげで、約50%の近視抑制効果があるという評価を得ています。
近視抑制効果のしくみ
ここ最近の研究結果によりますと、近視の進行は、角膜から網膜の中心へ真っ直ぐ結ぶ軸上よりも、「網膜周辺部のピントが合わないことによって起こるのではないか」と報告されています。眼鏡を使って近視を矯正すると、軸上にピントを合わせることは可能ですが、その周りでは眼鏡のレンズの構造上、網膜よりも後方にピントを合わせてしまう部分がたくさん出てしまいます。この状態を、周辺部の「遠視性デフォーカス」と呼びます。デフォーカスとは、簡単に言えば「ピンボケ」です。それゆえに近視が進行しやすくなるという仮設が唱えられています。
一方、オルソケラトロジーを使った治療を行えば、角膜が矯正されてカーブが急峻化(きゅうしゅんか:急なカーブが生じる)されるため、網膜の周りにもピントが結ばれやすくなります。これにより、周辺部の遠視性でのフォーカスも良くなるため、角膜から網膜との軸長が伸びてしまうことも予防できます。これらの結果、近視の進行が抑えられるのです。
注意事項
日ごろからコンタクトレンズを使われている方は、角膜を元の形状へ戻す必要があるため、来院日までの間はコンタクトレンズを使わずにお過ごしください。
※ソフトコンタクトレンズを使用されている場合:来院日の3日前から
※ハードコンタクトレンズを使用されている場合:来院日の1カ月前から
また治療開始までに、3~4回受診する必要もあります。また適応検査や装用のトレーニングは、お時間を要する可能性が高いので、当日はスケジュールに余裕を持ってお越しください。
診療の流れ
1適応検査・トライアル装用
オルソケラトロジーレンズの装用に適しているか、近視の度合いや眼の健康状態を調べます。検査で問題なければ、院内のトライアルレンズを装用していただきます。
2お試し装用【約1週間から1か月間】
個々の患者様の眼の状態に合わせた専用レンズを装用します。
治療の継続を希望するかを決めてください
※継続しない場合は、専用レンズを返却していただく必要があります。紛失の場合1枚につき44000円(税込)かかります。
※治療の継続を希望しても、眼の健康状態などにより、治療を続けられない場合もあります。
3治療の継続
お試し装用に満足し、このまま治療を継続する場合は、追加費用の支払いが必要です。
4定期検査の受診
治療を継続している間は、3か月ごとに定期検査の受診が必要です。
費用(税込)
※本治療は保険の対象外、自由診療となります。
※医療費控除の申請が可能です。当院から発行した領収書は大切に保管してください。
※本治療中に、眼科医が必要と判断した場合は、その疾患に対する眼科的治療を受けてください。その際、費用は別途かかります。
【初年度】治療にかかる費用(税込)
検査・ |
自費診療 |
---|---|
お試し装用 *専用レンズの使用料 *お試し期間中の検査費用 *初回ケア用品 |
両眼 49,500円 片眼 33,000円 |
治療継続費 *専用レンズ代 *1年間の定期検査代 *専用レンズの破損交換 保証(1年以内、片眼につき1回) *継続決定後、途中で使用を中断した場合にも返金はございません |
両眼 143,000円 片眼 99,000円 |
その他の費用 レンズの破損、紛失、劣化 |
44,000円/枚 |
治療にかかる費用 | |
---|---|
適応検査費 | 5,500円 |
お試し装用 ※1 | 両眼 49,500円 片眼 33,000円 |
治療継続費 ※2 | 両眼 143,000円 片眼 99,000円 |
その他の費用 ※3 | 44,000円/枚 |
※1 専用レンズの使用料、お試し期間中の検査費、初回ケア用品を含みます
※2 専用レンズ代、1年間の定期検査代、専用レンズの破損交換保証(1年以内、片眼につき1回まで)を含みます
治療開始後、途中で使用を中断した場合にも、返金はございません
※3 レンズの破損、紛失、劣化
2年目以降にかかる費用(税込)
定期検査代(年4回) | 33,000円/年 |
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レンズの定期交換 *2~3年毎の交換をお勧めしています。 |
44,000円/枚 |
治療にかかる費用 | |
---|---|
定期検査代(年4回) | 33,000円/年 |
レンズの定期交換 ※ | 44,000円/枚 |
※ 通常、2~3年毎の交換が必要となります
ケアグッズ
アミノソラ(毎日・こすり洗い用・保存溶液(お試し中)) | 院内にて販売をしております。990円(税込) |
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cleadew SL(毎日・契約後の保存溶液) |
眼科専売品のため、院内にて販売をしております。1,100円(税込) |
プロージェント(2週間毎・タンパク質除去洗浄用) | 院内にて販売をしております。1,540円(税込) |
※医師の定めるオルソケラトロジー使用ガイドラインは、感染予防のためcleadewによる保存を推奨しています。
※契約後にcleadew保存での開始後もアミノソラでのこすり洗いを毎日継続してください。
よくある質問(Q&A)
どういった方に適していますか?
裸眼視力が約0.1(-4D)までの方ですと、効果に期待できると言われています。当院ではその範囲を適応と定めています。ただし、オルソケラトロジーの治療に適しているかどうかにつきましては、医師が慎重に検査をしてから決定します。トライアルもできますので、気になる方はぜひご相談ください。
近視の進行を抑えられると聞きました。
近年の研究結果によりますと、眼軸長の伸びによる近視進行は、網膜の中心部より周辺部の状態に関係しているのではないかと分かってきました。オルソケラトロジーのレンズは角膜の形状を変えることで、網膜の周辺部に焦点を合わせる効果が高くなるとされています。そのおかげで、眼軸長が伸びにくくなると評価されています。実際に、このことについて触れられている研究論文も出ています。
オルソケラトロジーのメリットについて教えてください
オルソケラトロジーは、2009年から厚生労働省によって認められた治療法です。しかし、アメリカはすでに40年以上もの実績を持っています。2002年にて、FDA(Food and Drug Administration:食品医薬品局、日本の厚生労働省にあたる機関です)から就寝時の連続装用が認められたことで、一気に多くの国に普及されるようになりました。
レーシックなどの手術治療よりも、身体への負担も少なく済みます。また専用のコンタクトレンズは、酸素を通しやすい素材で生成されているため、コンタクトの連続装用によるトラブルも起こりにくいとされています。
治療中にトラブルが生じても、装用を中断することで元に戻すことも可能です。
治療を続けるか否かも、患者さんご本人または保護者の方の意思で決められます。なお、治療は全額自己負担である自由診療となっています。
年齢制限はありますか?
レンズの取り扱い・管理ができる年齢であることが望ましいです。しかし小さいお子さんから20代前半の方まで、あらゆる年代の方が治療を受けられています。レンズの管理が行えれば、どの年齢からでも受けていただけます。
治療に不向きな方っていますか?
うつ伏せで寝る癖がある方、強度近視の方、強度乱視の方、他の眼科疾患がある方には適していません。また、コンタクトの管理が困難な方にも、適していません(お子さんが受けられる場合は、保護者の管理の元でご使用下さい)。
痛みがないか心配です。
この治療では、特殊なハードコンタクトレンズを使っています。初日は異物感やゴロゴロ感を伴うかもしれませんが、2~3日経つと角膜が矯正されるため、不快感も減っていきます。異物感が我慢できなくなって、治療をやめる子はほとんど見られません。適切な方法で装着して眠ると、翌朝には矯正効果が得られるので、すぐに効果が実感できるかと思われます。
装用中に違和感があったら?
レンズと角膜の間に空気が入ってしまうと、違和感が生じるかもしれません。そうなっても目に問題はありませんが正しく効果が得られない可能性もあるため、念のためレンズをいったん外し、もう一度つけ直してみてください。それでも違和感がありましたら、装用を中断して当院へご相談ください。
レンズのケア方法って難しそう……
一般的なハードコンタクトレンズの管理・ケア方法と大差はありません。なお、洗浄は当院から推薦された洗浄液を使い、医師から指示された方法で洗浄してください。
注意することはありますか?
治療として用いる専用レンズですので、眼科医から指示された装用時間や方法などを守ってください。
レンズはどれくらい持ちますか?
レンズの寿命は、一般的な高酸素透過性レンズとほぼ同程度です。2~3年経ちましたら交換しましょう。定期検査時にレンズの傷や汚れをチェックしますので、交換の必要がある場合はお伝えさせていただきます。
ケア用品は、一般的なコンタクトレンズと同じで問題ありませんか?
特殊なレンズなので、必ず医師から指定された製品を使用してください。