網膜・ぶどう膜の病気

飛蚊症

飛蚊症小さなクズ、虫、アメーバみたいなものが視界にふわふわと浮いて見える状態を「飛蚊症(ひぶんしょう)」といいます。白い画用紙や晴れている空を眺めると、目立って見えるようになります。飛蚊症のほとんどは、生理的要因によって起こるものですので、特に心配する必要はありません。しかし、失明するリスクが高い眼疾患のサインとして現れることもあります。飛蚊症は、老若男女問わず誰にでも起こり得ます。突然現れた飛蚊症や重度の飛蚊症は、何らかの疾患のサインでもあるため、早めに眼科を相談することをお勧めします。

ぶどう膜炎

ぶどう膜とは、虹彩と毛様体、脈絡膜(みゃくらくまく)から成っている、血管がたくさん通っている部位です。そこに起こる炎症を「ぶどう膜炎」といいます。主な症状としては、目の充血、目のかすみ、飛蚊症などが挙げられます。
炎症を軽減させるために、ステロイド点眼や注射による治療などが必要になります。

糖尿病網膜症

糖尿病になると、目に様々な合併症が起こります。糖尿病による目の合併症としては、緑内障や白内障、角膜障害、眼球運動障害、ぶどう膜炎、糖尿病網膜症などが挙げられます。中でも糖尿病網膜症は、糖尿病の三大合併症とされている疾患です。網膜の血流が滞ることで発症します。
高血糖状態が続くことで血管が弱くなると、出血が生じやすくなります。網膜には細かい血管がたくさん集まっているため、高血糖状態の影響を受けやすいのです。網膜に届けられるはずの酸素や栄養が不足するため、酸素・栄養を補うために「新生血管」がつくられます。新生血管は、元々ある血管よりも繊細なので、出血が起こりやすいとされています。糖尿病の患者さんは目の自覚症状に乏しくても、必ず定期的に眼科へ受診することをお勧めします。眼科受診の頻度ですが、網膜症が全くみられない方は半年~1年に1度、単純網膜症の方は3~6ヶ月に1度、前増殖網膜症の方は1~2ヶ月に1度、増殖網膜症の方は2週間から1ヶ月に1度を目安にしましょう。治療法は病状の進行に応じて、レーザー治療や硝子体内注射、硝子体手術の中から選択します。

網膜静脈閉塞症

網膜上を通る静脈が詰まることで起こる疾患です。静脈が詰まることで血流が止まった結果、血管が破れて出血し、網膜や黄斑に浮腫みが起こります。それによって視力低下が生じます。発症原因は主に、高血圧や糖尿病や脂質異常症による動脈硬化などです。網膜静脈閉塞症の治療法は病状の進行に応じて、レーザー治療、硝子体内注射、硝子体手術の中から選択します。

中心性漿液性脈絡網膜症

黄斑に水が溜まってしまう疾患です。30~50代の働き盛りの男性に多く、片目に起こるケースが多いとされています。ハッキリとした原因は分かっていませんが、ストレスが関与しているのではないかと言われています。また、喫煙や妊娠、副腎皮質ステロイド薬によって発症することもあります。網膜に栄養を届ける脈絡膜の血管から、水分が漏れ出た結果、網膜の真ん中にある黄斑に浮腫が生じます。
自然治癒されるケースも多いのですが、なかなか治らない場合は、レーザー治療などの方法も検討されます。また、治った後でも再発する可能性はあります。

網膜裂孔・網膜剥離

網膜裂孔とは、網膜に孔ができる疾患です。裂孔ができても視力に問題は起こりませんが、放っておくと網膜剥離に移行するリスクがあります。網膜剝離になると外科手術が必要になるため、網膜裂孔のうちに治療を行うことが大切です。

網膜剥離とは、網膜が眼球内壁から剥がれてしまう疾患です。視野欠損や視力低下を起こし、最悪の場合、失明に至る恐ろしい病でもあります。網膜が眼底から剥がれると、眼底の毛細血管から酸素や栄養が届けられなくなるため、少しずつ視細胞が死滅します。視細胞の死滅した部分は元に戻せないため、進行するほど治療も困難になります。進行を抑えるためにも、早期発見と早期治療には心がけましょう。

網膜色素変性症

遺伝子についた傷によって起こる疾患です。遺伝が原因とされていますが、網膜色素変性症の患者さんの子どもにも、絶対に遺伝するとは限りません。発病頻度は3,000~8,000人に1人の割合だと報告されています。
網膜は、視細胞(光を受け取る細胞)が1億個以上も集まっている組織です。網膜色素変性症は、この視細胞の老化が早く進むことによって、細胞の働きが得られなくなる疾患です。老化スピードは患者さんによって異なりますが、光を受け取るのが難しくなるため、夜盲症(夜間や暗い場所にいると物が見えにくくなる状態)や見えにくさに悩まされやすくなります。

加齢黄斑変性症

網膜の真ん中に位置する「黄斑」が、加齢に伴って変性し、機能が落ちてしまう疾患です。
網膜は外界から入ってきた光を受け取るのに必要な組織です。黄斑はその中心的存在であり、私たちの視力に一番関わっている部位でもあります。黄斑の機能が低下すると視力障害が起こり、失明に至る可能性も高くなります。日本人の中途失明原因の順位では、加齢黄斑変性症は第4位を占めています。また、日本では20年もの間、平均寿命の上昇やライフスタイルの欧米化によって、加齢黄斑変性症の患者数が増えつつあります。また、喫煙の習慣化も、発症リスクを上昇させる要素になります。
日本では、網膜の外側に発生する新生血管によって引き起こされるケースが多く、その発症者のほとんどが高齢者と指摘されています。基本的に、加齢黄斑変性症は硝子体注射で治療していきますが、黄斑部から外れている際はレーザー光凝固術を選択することもあります。

硝子体注射(抗VEGF療法)

眼底に生じる疾患のほとんどは、眼底部分に栄養・酸素を送る血管が狭くなる、または詰まることで発症します。血管が詰まると目の組織に、酸素や栄養が届かなくなります。その状態が長引くと、私たちの身体が必要としている栄養を届けようと、新生血管を作り出します。しかし、この新生血管はもともとある血管よりも破れやすいため、すぐに詰まったり破れたりします。
近年の研究では、VEGF(血管内皮増殖因子)という物質が、新生血管の成長を促していると報告されました。これにより、VEGFの働きを抑える成分を持った「抗VEGF薬(ルセンティス、アイリーア、ベオビュ、ラニビズマブBS)」が登場しました。目の表面から硝子体腔へ、極細針を使って抗VEGF薬を注入することで、新生血管の増殖を食い止めていきます。また、血液や栄養などの成分が漏れ出ることを予防することにおいても期待できます。抗VEGF療法は、加齢黄斑変性や糖尿病網膜症をはじめ、網膜静脈閉塞症、病的近視(脈絡膜新生血管)、血管新生緑内障などの治療として用いられています。

レーザー光凝固術

眼底に生じた新生血管などの病変部に、レーザー光を照射して焼き固める方法です。病変部位を焼き固めることで、病変の拡大と悪化を防いでいきます。なお、健康な網膜組織にも影響を及ぼすため、黄斑部に生じた病変には適用されません。
当院では、網膜組織への影響にも最大限考慮しながら、レーザー光凝固術を積極的に行っております。