スマホ近視・スマホ老眼とは
近年では新型コロナウイルス感染症の流行によって、多くの方が登校・通学を控え、自宅内で過ごす時間が増えるようになりました。テレワークやオンライン授業が推奨されたことで、自宅内でも勉強や仕事で、パソコンやタブレット端末などを使い続ける時間が増えました。また飲み会もオンラインで行われるようになり、遊びでもスマートフォンやゲーム機などで、液晶画面を見続ける時間が増えた方も多くなっています。
スマホ近視とは、こういったデジタルライフによって起こる目の不快な症状をまとめて呼んだものです。
近くを見続ける習慣などで眼球を動かし続けたことで起こる「毛様体筋の疲れ」や、液晶の光源やブルーライトを見続けることによる「眼精疲労」、涙が蒸発する「ドライアイ」「まばたきの回数の減少」といった症状に悩まされやすくなります。また、首をうつむきながらスマホを見続けることで、首や肩への負担が大きくなることもあります。
スマホ近視を防ぐには、液晶ディスプレイを見続ける時間を短くし、適度に休憩を入れたりディスプレイの照度を調整したりすることが大切です。また、作業する部屋の照明環境やエアコンの風向きも工夫すると良いでしょう。また、ディスプレイ作業が多い方は、眼鏡やコンタクトレンズがご自身に合っているかチェックするようにしましょう。合わない矯正器具は眼精疲労の原因にもなりますので、定期的に眼科で検査を受けることを推奨します。
スマホ近視の症状
スマホ近視は放っておいても自然治癒されない目の疲れです。IT眼症などと同じように、日常生活の変化によってディスプレイを見る作業時間が多くなったことで、眼精疲労になっている状態とも言えます。そのため症状も眼精疲労と同じように、視界のぼやけや二重に物が見える、目周りの痛み、目が重く感じる、目が開けられなくなるほどの症状、こめかみや頭の痛み、頭が重く感じる、肩こり、吐き気などの症状がみられます。
また、目の乾きや目の痛み、充血といった、ドライアイと似た症状も現れます。これは、集中しながら液晶画面を見続け、まばたきする回数が減った結果、ドライアイになりやすくなるからです。
目の症状
- 涙目になっている
- 目が乾いた感じがする
- 目が充血している
- 物が二重に見える、ピントが合わない
- 眩しく感じる、視界に光が走る
- 目が熱く感じる
- 目または目周りが鈍く痛む
- まばたきの回数が多くなった
- 視線を1つの物に固定するのが難しくなった
その他の症状
- 頭痛
- めまい
- 肩や首、腕、腰などのこり、痛み、しびれ
- 吐き気や嘔吐
- 下痢
- 食欲不振
- 生理不順
- 不定愁訴や神経症
- 三叉神経痛・不快感からくる眉間や額のしわなど
スマホ近視の原因
現代は、パソコンなどのディスプレイ作業、通勤中でのスマートフォンの操作、タブレット端末を用いた勉強、テレビやスマートフォンを使ったゲーム操作、テレビ視聴など、あらゆる場面で液晶画面を見続ける機会が増えています。
現在のディスプレイは昔の製品よりも大きくなったため、液晶のバックライトの面光源やLED照明のブルーライトなどを浴びる量も増えました。このことから、現代は昔よりもさらに、目が疲れやすい環境になっていきました。
また、寝る前に液晶画面を見ることで、脳が興奮して睡眠の質が悪くなったり、睡眠が足りずに目の疲れが解消しにくくなったりしています。
また一般的に、人間は3秒に1回の頻度でまばたきをしています。しかし、パソコンやスマートフォンを使い続けている時のまばたきの回数は、およそ12秒に1回までになるとされています。目を開き続けている時間が増えるため、涙が蒸発しやすくなり、ドライアイが起こりやすくなるのです。
スマホ近視の検査
視力検査や眼圧検査、眼底検査などの検査はもちろん、VDT作業に従事している方には、下記の検査を受けていただきます。
- 目をきちんと上下左右に動かすことができるか(眼球運動)
- まばたきの回数が適切かどうか(瞬き)
- 涙の分泌量が不足しているかどうか(ドライアイ)
- 近くの物を見た時、きちんと黒目が鼻側に寄っているかどうか(輻湊:ふくそう)
- 遠くの物から近くの物へ視線を変えた時、すぐにピントが合うかどうか(調節)
- 近くを見る時、瞳がきちんと小さくなっているかどうか(縮瞳)
上記の検査をメインに行います。これらの検査で異常が発見されましたら、治療や生活に関する指導を行います。
スマホ近視の治療
点眼治療
まずは眼精疲労と同じ治療法を選択します。疲れ目や眼精疲労を完治させるわけではありませんが、サンコバ(ビタミンB製剤)や散瞳・調節麻痺薬などの点眼薬を処方します。
ドライアイ系の不快感につきましては、ムチン(涙の粘性を維持させ、目の表面に留まりやすくする役割を担っている物質)を補う「ムコスタ」や「ジクアス」などが処方されます。こちらの薬は、効果が高いと評価されています。
軽度のスマホ近視でしたら、ドライアイの治療をメインに行えば改善しやすくなります。しかし重篤化すると、点眼薬だけでの治療は難しくなるため、生活環境やライフスタイルの見直し、温罨法(おんあんぽう)などのセルフケアが重要になります。
液晶画面を見る時間を減らす
スマホ近視は、液晶画面を長時間見続けることでなります。根治させるにはまず、液晶画面を見る時間を減らすほかありません。しかし、現代社会でそういった治療法を行うのはとても難しいことかと思われます。それゆえに、ご自身で使い方を見直すことが重要になります。仕事や勉強でパソコンやタブレット端末を見る時は、できる限り1時間の作業につき15分の休憩時間を設けるように心がけましょう。時間を確保するのが難しい場合は「たまには小休止を入れよう」と意識して、目を休ませる時間を作ることをお勧めします。その時は、「窓の外を見る」「目を閉じる」などを行い、しっかり目を労わってあげると良いでしょう。また、作業中は意識しながら、まばたきを増やしてみることもお勧めです。
作業環境の改善ですが、まずは「目線が下がるように画面の位置を変える」「室内光が映り込まないようディスプレイの位置を調整する」といった工夫を凝らしましょう。
色温度やコントラストなどが調整できる機種をお持ちの方は、できる限り色温度・コントラスト・輝度を低めに設定すると良いでしょう。また、中には、目への負担を減らした「ダークモード」などに設定できる製品もあります。
さらに、交通機関内でスマートフォンを操作する時間も、できる限り減らしてみましょう。電車に乗っていると画面も揺れるため、眼精疲労が引き起こされやすくなります。まずはできる対策から少しずつ取り入れ、できるだけ目への負担を減らしていきましょう。
適度な運動、リラックスする時間を作る
適度な運動を行うと、血流が改善されやすくなります。また、スマホ近視の症状改善にも有効ともされています。過酷な運動よりも、ゆっくりしたウォーキングなどの方が、目のリラックス効果を得られるかと思われます。ウォーキングは遠くを眺める時間が増えるので、毛様体筋も緩みやすくなり、目の疲れ解消にも期待できます。
また、精神的なリラックスも重要です。「好きな音楽を聴く」「何もしない時間を確保する」ことも、目の疲れ解消に効果的です。